家は呪いである。5年にわたり、実家の売却と父の借金を巡り、父、上の妹、下の妹、長男である私は戦争をしていたが、去年10月に突然全ての問題にカタがついた。教訓を忘れないようにそのときのことを記録することにした。
詳細な経緯は割愛するが、5年前、長年音信不通だった父が、内縁妻に捨てられ莫大な借金とともに実家に戻って来た。私は「実家を売り父の借金を返し、残ったお金で将来的に父の介護をしよう、年金が少ない父には生活保護を受けさせ団地にでも住んでもらおう」という主張をしていたのだが、妹2人は「思い出がある実家は売れない、生活保護は恥ずかしいから絶対にダメ、権利を悪用するな、父は実家に住めばよい」という主張、父は「長男なんだから親の借金と介護の面倒見るのは当然」という主張。全く話が通じない。妹2人から「絶対に実家を売るのは許さない」という攻撃的なLINEがガンガン来る中、毎月父から「また10万円貸してくれ、支払いができない」という連絡がくる(当然返せる目途はない)。生きた心地がしなかった。※ちなみに実家は祖母がもともと権利をもっていて、祖母と母が亡くなったときに私と妹2人に相続されたため、祖母から見て義理の息子である父は実家に関する権利をもっていない状態であった。
いつ終わるとも知れない戦争に追い詰められた私は、住んでいる自治体の法律相談サービス(無料)を利用した。「父の借金と介護から逃れるすべはないか?親子の縁を切らないと、いつか破産してしまう」という質問をしたところ「血縁を切ることは法律的には不可能、ただし介護は義務であるものの、一親等(私の妻子)が最優先であり、あなたの生活を破綻させてまでお父さんの面倒を見る必要はない。離婚した家族への養育費と同様にあくまで努力義務。但し、仮に要介護状態になったお父さんを放置した結果死んでしまった場合は刑法218条「保護責任者遺棄罪」に問われる可能性はある」とのこと。さらに「父に生活保護を受けさせたいと思っているが、父の子供(私と妹2人)に支払い能力がある場合、父の生活保護は却下されるだろうか」という質問に対しても「仮にお父さんが生活保護を申請した場合、まず親族から援助してもらうようすすめられると思うが、全員拒否すれば生活保護を受給できなくはない、但し役所の審査は厳しいので簡単ではない」との回答。全く逃げ道がないと思っていたので、少し救われた気がした。ダメ元でも相談してみるものだ。
争いが激化する中、実家を売ることに最も反対していた上の妹が突然病気で亡くなった(2022年11月)。上の妹(声が強い人間)の後ろ盾がなくなり、下の妹、父、上の妹の配偶者家族は一気にトーンダウンして実家を売ることを承諾。鉄は熱いうちに打て。不動産業者に売却を委託したところ半年ぐらいで民泊業者の買い手がつき売却が成立(2023年8月)。売ったお金を権利者で分配、父の借金を完済させ、将来的な介護費用の目途も立ち、父は下の妹が引き取ることになった(2023年10月)。
5年戦争は突然終戦を迎えた。その後、最低限の事務連絡を除き、父、亡くなった上の妹の配偶者家族、下の妹との交流はない(私以外は交流している様子)。向こうは私に合わせる顔が無いし、私も彼らを許す気にはなれない。まさか自分がこのような争いに巻き込まれるとは思っていなかったし後味の悪い終わり方であったが「お金のトラブルに巻き込まれたときに法律相談するのは有効」という教訓を得ることが出来た。