1993年3月。浪人が確定するという形で受験勉強が終わる。卒業式まで授業がなくて暇なので朝から晩までテレビを観てたが、特に緒形直人と小泉今日子が出演する「愛するということ」というドラマが好きだった。
小泉今日子(ヒロイン)は勤めてる会社の同僚と婚約していて結婚間近だったのだが、近くで働いている緒方直人(ストーカー)に一目惚れされてしまう。最初は断っていたが、家の近くをウロウロされ毎日のように「好きだ」とか「結婚してくれ」とか言われ続け、冷静な判断ができなくなったヒロインは最終的にストーカーを受け入れてしまう。
主題歌「優しい雨」がとても良くて、緒方直人が爽やかフツメンなので、恋愛ドラマを観ている錯覚に陥るが、良く考えて欲しい。このドラマは「恋愛経験が少ないヒロインがストーカーにしつこく付きまとわれ、洗脳されてしまう」話なのだ。
緒方直人ファンの方、本当にごめんなさいと先に謝っておく。緒方直人のストーカーっぽい愛情表現が面白くて、当時以下のような妄想をして楽しんでいた。私はこのようなクダラナイことを毎日考えて過ごしている。
仮にストーカーの誘いをヒロインが最後まで断ったらどうなったか。相手は悪質なストーカーなので刃物で脅すことなど朝飯前。車で拉致され家に監禁。「誰よりも君のことを愛してるのに何故わかってくれないんだ」なんてことを毎日言われ、ペットのように扱われる日々。ヒロインは精神を病み「早く殺してくれ」と懇願する。
約6か月後、ストーカーが外出してる間にヒロインは窓から脱出することに成功。満足に食事を与えられずガリガリにやせ細ったヒロインは歩くのもままならないが。やっとのことで婚約者の元に戻り、束の間の幸せを噛み締めるが、刃渡り数10センチのナイフを持ったストーカーに追いつかれ、2人とも惨殺されてしまう。
悲鳴を聞いて駆け付けた警察にストーカーは撃たれるが、満足そうな笑みを浮かべて息を引き取るのだった。
夕方のニュースでインタビュー受けた近隣住民は「小さい頃は大人しかった」「そんな恐ろしい事をするようには見えなかった」「いつも笑顔で挨拶してくれた」「学校の成績は常に上位でスポーツもできるので人気者だった」なんてコメント。事件は最悪の結果で幕を閉じる。
最後に念を押しておくがドラマ「愛するということ」は至って普通の恋愛ドラマである。私の妄想ストーリーを真に受けないで頂けたらありがたい。